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"大衆演劇(旅芝居)の在る状態"が好きなので

殺人の罪で服役している人のこと 山本譲司著「獄窓記」より

第3章「塀の中の掃き溜め」より

 一般的に言うと、殺人犯というのは、気が短い人間だと思われがちだが、寮内工場で出会った人たちは、そうではなかった。殺人罪で服役している8人全てが、温厚でおっとりした性格の持ち主だった。耐えに耐えて、忍びに忍んで、その挙句に、人を殺めてしまったのであろう。彼らは、たびたび、たちの悪い収容者からの苛めを受けていた。

「おい、人殺し。俺、生きていくのが嫌になったんで、今度、俺を殺してくれよ。一人殺すのも、二人殺すのも一緒だろ」

 こんな挑発にも、彼らがそれを相手にすることは、ほとんどなかった。

 さらに言うと、殺人を犯してしまった者たちは、他の同囚と比べ、罪を償うという意識が非常に強かった。したがって、作業に取り組む姿勢や日常生活における態度も、きわめて実直であり、指導補助の立場からすると、手がかからない人たちでもあった。逆に、軽微な罪で服役している者ほど、わがままが多く、世話が焼けた。「ションベン刑の収容者には近寄らないほうがいい」という教育訓練工場の指導補助が言った言葉が思い起こされる。

 山本譲司著「獄窓記」(P268〜P269)新潮文庫

 

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