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"大衆演劇が在る状態"が好きなので

「川の茂みも薄情な」・・・お芝居「紅蜥蜴 べにとかげ」劇団武る@鈴成り座 ゲスト沢田ひろしさん 2017年8月6日夜の部


「こんな守り袋、持っていたって仕方がねえと、ある時、俺ぁ川へ投げ捨てた。川の茂みも薄情な、止めてもくれず、下へ下へと流れていったぁ・・・」(紅とかげの銀次郎)

時代人情劇「紅蜥蜴(べにとかげ)」

■あらすじ(メモから書き起こし・途中まで・敬称略)

信州のある集落。

江戸の世情を騒がせた悪党・紅とかげの銀次郎(座長三条すすむ)が、信州路に逃げ込んできたらしい。「何としても捕まえよ」親方(都京太郎)が捕り方たちを集めて言う。まだ駆け出しの春太郎(都たか虎)も呼ばれ、初めての大捕物に張り切っている。

 春太郎は父親新兵衛(沢田ひろし)と妹おちよ(都祐矢)の三人暮らし。家に戻って「今夜は物騒だから家から出ないようにしてくれよ」と父と妹に言う。

「大きな役目だ。お上から預かるその十手、曇らせるんじゃねえぞ。たとえ罪人が親戚でも、情けに流されて天下の御法を曲げちゃならねえ」と答える新兵衛。元は自分も十手持ち。息子の春太郎の成長に目を細めて送り出す。

雨の音。急いで新兵衛が貰い風呂へ向かう。「御用だ!」捕物の声。追われる紅とかげの銀次郎、とっさに新兵衛の家に身を隠す。そこへ帰ってきた新兵衛と出くわす。

新兵衛は驚かず、ずぶ濡れの銀次郎に「風邪をひくから」と着物を貸す。家の中を見渡して、十手があるのを見て警戒する銀次郎。

「確かに俺は十手持ちだったが今は隠居の身だ。それに、昔のたとえで言うだろ、"窮鳥懐に入ればまた狩人それを撃たず"ってな」

新兵衛の落ち着きぶりに合点がいった銀次郎は、請われるがままに身の上話を始める。

幼い頃、父親に角兵衛獅子に売られたこと。辛くて飛び出し、空腹に耐えかねて握り飯を盗んだこと。そこから盗みを繰り返し「紅とかげ」と言われるような悪党になったこと。

黙って聞いていた新兵衛の顔色が変わる。他でもない、銀次郎を売った父親とは、自分のことだったから・・・

 

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「紅とかげの銀次郎」役  三条すすむ座長  

 

感想など 流れてゆくお守り袋

1幕2景、50分強。

序盤の捕物前は、嵐の前の静けさ。ひと波乱の予感が漂います。

第2景での銀次郎が新兵衛に明かす身の上話。すすむ座長の抑揚豊かな語りから繰り出される、1つ1つの光景が目に浮かび、引き込まれました。

特に、冒頭に書いたセリフ。

親からもらったお守り袋を「こんなもの持っていたって仕方がねえ」と川へ投げ捨てた銀次郎。自分で捨てておきながら「茂みも薄情だ、止めてもくれない」と言うのです。その時の寂しさと、淀みに飲まれてゆく「お守り袋」が目に浮かぶようでした。また、そのお守り袋は銀次郎自身の姿とも取れて。。。

後半の展開がやや速くて、端折られたか、辻褄が??つながらなったところが。もう少しじっくりゆっくりやってもらえたら~と、欲なことですみません。

 

沢田ひろしさんのこと

かつては春陽座で劇団指導者として活躍、今はフリーに。色々な劇団さんの、主に関西の劇場公演でゲスト出演されています。

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個人舞踊「雨の大阪」歌詞に「天神祭」が出てくるので、選ばれたのかな?

 

達者な、そして不思議な役者さんです。そう、魔法使いのような・・・

沢田さんが「雨だ」といえば雨が降り、「私はそういう女だよ」と言えば鉄火肌の女が座っている。緻密な演技と役支度。

舞踊では、豪快なアクション(バック転もできる!)やムーンウォークが飛び出すと思えば、北国の風が吹きすさぶ原野や太鼓が響く空が見えるような「越後獅子の唄」、心が凍てつく人形振り・・・(この辺り、バレエ漫画「SWAN」を手本に色々表現してみると楽しいです^^)

見ていて胸が熱くなる「訳あり男」を全身で演じながら、ゲストとしての任務を完うするのを第一義としているような。

ゲストで呼ばれた先の劇団を盛り立てるんだという強い意思で、決して出過ぎることがない「一線」も、見える。そんな義理堅い職人気質なところになんて格好よいんだろうと思う半分、もっと出張って欲しいなあとも思う、ファン(観劇仲間ではひろしネットワークと称してます^^)の1人です。

 

「紅とかげ」新兵衛役のひろしさん。

手ぬぐいをひょいと引っ掛け、貰い風呂。駆け出す様子から、どれくらいの距離をゆくのか、わかるような気がする。そんな距離まで見える。

濡れながら帰ってきて、傘の雨を落とす。その所作から、舞台が湿める。
(今度は演劇漫画「ガラスの仮面北島マヤの演技を見て青筋を立ててビビる姫川あゆみの気分で^^)

銀次郎の話を黙って聞きながら、火箸で火鉢を搔き回す。探っているのは炭ではなく、自分の過去・・・そんな心象の表現を目の当たりにするほどに、生の舞台に触れる喜びがこみ上げて。

このような細やかな「受け」(リアクション)の演技で、主役の存在を一層濃く、映えさせているのだと思います。

 

昔ながらの言い回しや、こちらの想像を掻き立ててくれる演技のやり取りがいっぱい。久しぶりに沢田さんが準主役でのガッツリ芝居が見られて(それでもまだまだ引き出しの奥は深そう)嬉しい夜でした。

  

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ラスト舞踊「じょんがら女節」

劇団武るの群舞は、スタンダードなフォーメーションをキッチリ繰り出される。舞台を大きく使って幅いっぱいにずらり!並んだ姿はとても華やか。奇をてらわず、舞踊の所作を踏まえることに重きを置かれている感じで、「踊りを見た!」という気持ちが満たされます。

 

 

 

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