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"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2016年の大衆演劇へ感謝観劇 心に刻まれた舞台の数々より〜 個人舞踊6つ

 

「びっくりした」

1年振り返って、特に印象深かった舞踊を思いつくまま上げてみたところ、これがキーワードになっているような。

とにかく、びっくりした。表現に。技に。場との溶け具合に。

あと一つ挙げるとしたら「らしさ」かも、、、

「びっくり」と「らしさ」の、6つの舞踊です。

 

蛇々丸さん(浪花劇団)「追分鴉」@堺東羅い舞座 2016.8.6夜の部

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「流れ」のなかに

蛇々丸さんの舞踊には、フィギアスケートの実況中継のような解説をつけたくなるのです。「ここでターンを入れてきましたね」「おっと、1回転しました、綺麗ですねー」「さあそして花道での演技です」…というような。

滑るように繰り出される所作。曲のリズムと身体の動きが「ビタッ」と合っている。ダイナミックな時も、ゆったり動く時も、一縷の狂いもなく。リズム感の良さがハンパない。呼吸も、音符1つ1つに合わせておられるのと違うかな、と思うほど。その呼吸のタイミングが舞踊から伝播するからか、見ているうちに、"舞踊曲"の世界に、すーっと誘いこまれている。

それは作詞作曲者が描きたかっただろう世界であり、安易な自己主張など入る余地はない。それでいて、この方にしか表せないだろう確かさを、同時に感じます。

手。動かせば、空気がまるで弾力のあるもののように見えます。

うまく言えないのですが、圧がかかった空気の中で踊っているような、、そんな錯覚に陥る時もあります。

どの舞踊も好きで、泣く泣く?選んだ「追分鴉」は、強烈な1本。

「びっくり」しました。

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「沓掛時次郎」を歌ったものだそうです。冒頭「渡り鳥さえ一羽じゃないか…」遠く浅間の山を見つめる時次郎。思いの乱れを滲ませた表情に、心を持ってかれる。

「おっとどっこい」という合いの手から、アップテンポに転換、いなせな舞。気取って気取って、強がりの旅がらす。最後は、どどーんと大上段に高らかにフィナーレが鳴り、腕を高く上げ、落としてゆく(その時も曲の"タメ"とビタっと一致)。お芝居1本分に値する濃密な世界。曲自体も秀逸で、これぞ大衆演劇ならではの舞踊では、、と思わされたのでした。

 

 

片岡梅之助総座長(本家真芸座)「博多夜船」@鈴成り座 2016.2.4夜の部 +「朝花」@庄内天満座 2016.11.13夜の部

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 通称「ターンテーブルの舞踊で、「びっくり」した1本。

メジャーコードの美しい曲調。舞台上手からそそそそそとやってきて("梅さま"の「そそそ」は天下一品)、中央位置で「すっ」と腰を落とし「一回転」スタート。至近距離で見ましたが、回転させているはずの足の動きが全くわからない!ええええどうなってんの??と、おののいている客席に対して、舞手は終始余裕の笑み。手には扇を持って、ちょうど鳥が羽を広げたような姿勢のまま静止、銀ビラのかんざしだけがキラキラと渚のような光を放つ。立ち上がる前に、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ"逆回転"されるのです。その時、わずかに上半身が揺れる。まるで機械仕掛けから解き放たれた人形のように。この瞬間がすんごい好き。1秒たりとも目が離せません。

 

もう1本の「朝花」は、11月の「梅之助祭り」の最後の個人舞踊。

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体調がすぐれないと言われていた中、敢行された「出ずっぱり」の日。終了予定時刻の21時もとうに回っていて、もう十分見せてもらった、もうラスト舞踊(総踊り)かな、、と思いきや、女形で登場されたのがこの曲でした。「びっくり」しました。

なんでここまで見せてくださるのだろう。時間が押してるし身体の大事をとって1本減らすこともできたはずで、お客さんも皆大満足やと思われました。それでも、決めた通り、やり遂げられる。いつもいつも鉄の意志を感じる。すごい舞台人や、この方は・・・ギフトのような1本。わたしゃこっそり泣いてました。

何かをいとおしむような目線。ミニマムな照明に浮かび上がる舞手は、影に包まれるようにも見える。衣裳、鬘も美しく、ラファエロの絵のようでした(拝)。

 

猿之助座長(劇団あやめ)「15の夜」@笑楽座 2016.7.23夜の部

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舞踏枠

この日は「猿之助祭り」超早着かえで魅せてくれました、もーすごいのなんの。エネルギッシュ。お得意の電飾もあり、これでもかと繰り出される舞台に、客席もおお盛り上がり。で、そんなめくるめく舞踊の中で、なんでこれなん?衣装もこの日の他の舞踊と比べると地味なもので。でも、これが最高〜に楽しくて、どストレート、そう、まるでミュージカルを見ているみたいで、テンションがあがったんです。

物議を醸し出したらしい?「盗んだバイクで走りだす♪」の歌詞を含む「15の夜」。

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夜中の街角、自販機から「熱い缶コーヒー」をプシュッと開ける当て振り。ゴミ箱へシュート!入らない。イラっとして、でも、拾って入れる。「大人たちは心を捨てろ捨てろと言うけど俺は嫌なのさ」胸をドン。盗んだバイクにまたがり、誰にも縛られたくないと、踊る、踊る。そして、出た、ヘッドバンキング!・・・ええ、ベタです。でもここまで徹底的に演じきれば、もう誰にも縛られようのない世界。そこには希望があるのです。

(上の写真、改めて見たらお着物がタータンチェックベイ・シティ・ローラーズを意識されたとかかしら…)
 

 

次の2本はミニショーから。

筑紫桃之助座長(筑紫桃太郎一座花の三兄弟)「深川がたくり橋」@オーエス劇場 2016.12.10夜の部

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赤い曲線

「びっくり」強烈な1本。
歌詞も、よくよく聞くと、どぎつい内容。舞踊も、、、R指定ですねこれは笑

筑紫桃之助座長はどこか女性的なムードがあるお方。薄手の生地に身体のラインが竹久夢二の絵の女性のように思いました。夢二の女性のように、"骨"の存在が感じられないほど、ひたすら曲線で表現される舞。

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真っ赤な衣装に真っ赤な照明。オーエス劇場ですから、場末の淫靡なムードが漂って。ミニショーからこれですかって。客席から聞こえてきた「わたしこれめちゃ好きやねん」という声に、同意して「うんうんわたしも」とうなづいてました。

最後、紫の帯がシュルシュルとほどけてゆく。人に引っ張られて、というのはよくありますが、一人でそれを演じられるのです。これ、密かにすごい技術ではないかと思いました。帯がどんどんとかれて、え、まさか、まさか、、、きゃー(絶句)でした。写真は自粛。。。

 

 

小龍優さん(劇団新)「戻り橋暮色」@鈴成り座 2016.12.14 夜の部

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予感

「小龍優オンパレード」のオープニングがこの曲でした。「戻り橋」セットの背景に、ベンチに腰掛けた小龍優さんが、冒頭の語りの部分を自らの声で語り、舞踊へ。

大衆演劇の舞踊ショーの定番曲の1つで、とても好きな歌です。女性で、しかも十代の優さんが踊られるのが、とても新鮮で、、、大人の女性が人生の悲哀を醸し出すそれとはまた違った、瑞々しさ、潔さ。

優さんの舞踊は、一目で惹きつけられました。筋が通った所作に、胸がすくような、気持ちのよい舞踊。「まだまだやりたいことがあるの!」という気概が、ひしひしと伝わってくるような、楽しい予感が湧くのです。何日か通って見せてもらった中で、どれか1つなんて選べないのですが、すぐに浮かんだのがこの舞踊だったので。。。

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劇団新さん、また関西に来られる可能性大とのことで、楽しみですー。

 

 

最後に、、、子役さんの舞踊から

媛野瑚南さん(まな美座)「江戸の闇太郎」@新吉宗劇場 2016.8.18 夜の部

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律儀さ

この方の舞踊にも一目惚れでした。こどもらしい、この歳にしかできない、素直でまっすぐな舞踊。旅の一座の子らがこうして1つ1つ教わってきただろうことを、思馳せられます。

踊っている瑚南さんの頭の中が透けて見えるよう・・・なんていうと、怒られそうですが、これはいい意味で、そう思うのです。見よう見真似で身体が勝手に動く、というのではなく、お師匠さんから教わったであろう「お手本」が、ちゃんと頭の中にあって、それと身体がつながっての踊りだと、思うのです。

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一心不乱に踊られるのですが、客席を見ていないわけではない。その距離感も、爽やかで。堂にいった「闇太郎」でした。

 

付記 その日その時自分だけの体験 でも

大衆演劇のこんなところが素敵なんですよ、見てもらいたいな、という思いから、舞台の様子が少しでも伝えられるよう、一所懸命書いているのですが、一方で、それとは矛盾していることーーここに綴る"感想"は、どこまでいっても個人的で、その日その場所、その時の自分の目を通して受けたものでしかない、ということ。。。

ひとの数だけ、その人だけの体験がある。その、それぞれの胸のうちにある体験の呼び水としてもらえたら、これほど嬉しいことはなく、願いながら書き置きます。 

しかし、上記6つに、"袴"や股旅が1本もないとは・・・偏りが半端ないですね^^;(頭取の"忠治"が見られなかったのが超悔しい~来年こそ)


と、ひとまずアップ、2016年振り返り、まだまだ続きますーー

 

 

 

 

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