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chomoku

"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2016年10月29日夜の部 浪花劇団@箕面温泉スパガーデン お芝居「安来のお仙」

大衆演劇 浪花劇団

10月最後の土曜夜 箕面温泉スパガーデンへ お芝居は「安来のお仙」

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ラスト舞踊「酔歌」

あらすじと配役

旅回りの安来節一座と大店との縁談話をめぐる時代人情劇。
1幕4景・1時間20分。(以下、聞き取りメモより書き起こし。名前の漢字は当て字です)

(配役)

  • お仙一座 お仙 浪花めだかさん
  • お仙一座 お仙の姉 浪花しめじさん
  • お仙一座 おまつ タイガー一心さん
  • お仙一座 新吉 浪花勘太郎さん
  • 大前屋善右衛門 近江新之介座長
  • 大前屋娘おかね 浪花成馬さん
  • 大前屋奉公人 とど松 三枡ゆたかさん
  • 大工の親方 大川龍子さん
  • 新吉の兄 富士 蛇々丸さん

 

お仙一座は、三人姉妹の大道芸人。街かどで安来節踊りを披露しながら旅をしている。踊り上手で働き者のお仙に比べて、夫の新吉は博打に酒びたり。旅回りの身を下げずんでいる様子。お仙の姉と妹のおまつが新吉の態度を諌めても、お仙は新吉を心配してかばい続ける。

さてその新吉が、金満家の大前屋善右衛門の娘おかねに見初められ、結婚を申し込まれる。自分には女房がいると断るも、大前屋の使いの富士は、なんと10年前に生き別れた実の兄だった。その富士に「親亡き後は兄が親、その恩を忘れたか」と言われ、応じてしまう。そして、お仙を諦めさせるために、大前屋と懇意の大工の親方が一計を案じる。。。

 

感想など 劇中芸の楽しさ

川端で。「大勢の人通りやなあ。ささ、ここで商売、始めよか」「よっしゃ」姉が太鼓の支度をすれば、お仙がまあるいツヤのある声で、往来に呼びかけます。

「あら、えっさっさ〜」

トン、トトトン。赤いタスキをシュッと投げ、ドジョウすくいのざるを叩いてくるくる安来節踊り。お仙役・浪花めだかさんの柔らかい舞は、昔の田舎の風景が見えるよう。太鼓をたたく気丈な姉役・しめじさんと、妹おまつ役の一心さんは11歳。3人の良い風情にテンション上がる〜、劇中劇や劇中芸にヨワいわたしでした^^;

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浪花めだかさん 個人舞踊「女鬼龍院」(2016/10/25) 格好いい
少年役から汚れ役まで、どんな役にも"個"を消して憑依される凄技の女優さん

 

自立する女性と放浪芸へのオマージュのような

大道芸人として健気に生きる姉妹が、金満家の大前屋から酷い扱いを受けます。辛い物語といえばそうなのですが、見方によっては、そうじゃない。

大前屋たち(=男)が嘲笑っても、お仙たち(=女)は顔をあげ、プロとして課せられた「仕事」を全うする。一流の芸を披露する。だから、全然惨めに見えないのです。

金や権力が価値基準である男と封建的社会から、女性として、放浪の民として、決別している。

浪花劇団のお芝居には女性への賛歌やなあと思うものが多いです。それらには、道徳や教訓ぽさは無し。むしろヤンチャ。特にこの演目では、男性陣は色々なお芝居の「型」を使って、しれっと悪役を演じている感じ。だからいいと思う。軽く見ることもできるし、何かの拍子にふと気づく、というくらいが、いいですよね。

「わたしらは芸を見せているだけや。笑われることも悪いこともしてない」

お仙の姉は大前屋に言い放つ。
芸人の矜持を持って毅然と生きるお仙たちの姿を見て、顔色を変える新吉・・・

 

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近江新之介座長「酔って膝枕」 

 

安来節一座」のこと

以下、以前も書いたことの再掲で少し長くなりますが、小沢昭一さん著「芸能入門・考」(明石書店)から引用させてもらいます:

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本には、島根での聞き取り調査によれば「安来節は"渡部お糸"が第一人者だけれど、全国津々浦々にまで広めたのは、山陰の貧しい山村、非差別部落の、名もなき娘たちだった」とあります。

「あちこちの、小さな小屋や、村祭りなどをめぐって、うたって歩くのである。有名なお糸一座などは、立派な劇場で公演してまわったけれど、非差別部落の娘たちが加わった一座は、そういう劇場よりも、"花"をもらって、村々を演じてまわるのであった。半ば物乞いに近かった」


「人気絶頂のお糸一座を街まで見にいける層は限られている。テレビはいうまでもなくラジオもない時代だ。…お糸一座のように、華々しくはなく、少人数でみすぼらしくても、山間の村までやってくる芸人たちを、農民たちは歓迎したのである」


芸能史のこのような側面を知らされる機会は、なかなかありません。また、このようなテーマを、商業演劇として取り上げたところで「万人受けする」ことは考え難い。それを、大衆演劇で演じられて、お芝居を通して知ることが出来るなんて、めちゃめちゃすごいことで、すんごい意義のあることではと、思うのです。

「安来のお仙」の作者は

座長に尋ねましたところ「初代明石たけ代さんが立てられたお芝居で、今これを演っているのはうちだけかも」とのこと。また「安来節の放浪芸は江戸時代にはなかったので、時代考証的には??なんですけど」と教えてもらいました。

初代明石たけ代さんが、何故どんな思いでこのお芝居を作られたのだろう。想像するしかないのですが、女性、そして放浪の芸人へのオマージュのように見受けまして、座長もそのように思っておられるようで、と、ほんの立ち話からの勝手な想像ですが、嬉しかったです。

「心の古い傷」

もう1つ、勝手な想像を、、、お仙が新吉の放蕩を許し続けていたわけも、決別するわけも、何となくわかる、なんて。見ながら思い出したのは「戻り橋暮色」の2番の歌詞ーー

"あの人は優しかった
私にだけは優しさをくれた
やくざな人とみんなが恐れ
背中の傷あと見たけれど
それは心の古い傷"
(「戻り橋暮色」歌詞:杉紀彦 歌:大月みやこ

お芝居の中では何も語られていないけれど、新吉には心の闇があって、お仙はそれを見抜いていたのではないか。旅かける一流の芸人のお仙なら。。。そんな、気がするのです。

 

以下、舞踊ショーから

浪花しめじさん・勘太郎さん・成馬さん「祭り男爵」f:id:chomoku:20161030073119j:plain

浪花成馬さん「一騎当千」動きが早くてほとんど撮れずでしたがf:id:chomoku:20161030073145j:plain

しなやかでかっこよかった! 

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浪花勘太郎さん「冬桜」

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タイガー一心さん「純情花吹雪」

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以下は別の日(2016.10/25)の写真でご紹介 

浪花しめじさん「雨の中の二人」

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しっとりと美しい

大川龍子さん「アカシヤの雨のやむとき」
情感と声量ある歌唱に拍手喝采

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蛇々丸さん ラスト舞踊「夫婦舞」より 

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ビシッと端正 個人舞踊の袴踊りは見たことがないですが いっぺん見てみたいなあ

 

夜の千秋楽でダブルの大入り めでたい手打ちで幕でした

 

浪花劇団 公演予定
  • 11月 座・三和スタジオ(尼崎市
  • 12月 御所羅い舞座(奈良県御所市)
  • 2017年1月 ゆーぽっぽ(広島県

とのことです 

 

 

 

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