chomoku

"大衆演劇が在る状態"が好きなので

「場」の恍惚 そこにいるだけでみな夢の住人

むかしを思い出すことは、なにも後ろ向きなことではなく、自分の哲学を深めるために必要な行為なのだ・・・と、いうような言葉を、どなたかのツイートで読んで、ちょっと気を良くして、昔話を1つ、書きます。

夢の大衆酒場

大阪の、とある古い大衆酒場が、今の場所に移転される前のこと。

お酒などほとんど飲めぬのに、いっぱしぶって、飲み歩いていた頃に、何度か行きました。

夢の中のようなお店でした。

照明は裸電球だけの少し薄暗い中、経年で角っこが丸くなった木の机、おでんの湯気。メニューはなし。BGMもなし。客の会話と、カチャカチャ食器の当たる音が響く店。

ほどよく美味しく、居心地よく、ほんでもって、めちゃめちゃ安い。もう信じられないくらい安くて、お勘定してもらうたびにびっくりしていた記憶があります。

お店を切り盛りするのは、優しそうな女将さんと、無口な親父さん、親父さんよりもっと無口な、体格のいい息子さんの3人。

カウンターといくつかのテーブル席があり、開店は確か午後3時くらいだったか、開けると同時に席を埋める常連客に混じり、いっぱしを気取りながら内心ドキドキ、席を陣取り、ほっと一息。

たくさんのお客さんの注文に、テキパキと対応し、熱燗やおでんの守りをし、出し巻き卵を焼き‥と、お三方が実に気持ちよく、阿吽の呼吸で動かれるのを、うっとりと、お酒よりもその光景に、酔いしれていたような気がします。

お客もまた、面白くて。吉本や松竹の舞台を地でいくような会話が繰り広げられていました。

ややこしい人もいましたね。。強面のオッチャン。お酒を飲みながら、インシュリンの注射を打っているんです。引きましたね。。。見たらあかんと思うのですが、どうしても見てしまって、困りました。あのオッチャン、今も元気でいるやろか。。(あのままああして飲んでたらかなりヤバいと思いますが)

この店を教えてくれた喫茶店のマスターが、「実はお店の人もお客もみんな俳優で、僕らがあの店から出た後、『はい、お疲れさーん』とか言うてるんと違うかって思うんですよ」と、言うてましたが、ほんまにそんな感じ、昔の日本の人情系映画からそのまま取り出したようなお店で。

お店の人だけでなく、みんなみんな、ややこしいお客さんも、自分も、そこにいるだけで、夢の中の住人になれたのでした。

 

 平日の昼間の、お芝居小屋の恍惚

大阪・浪速クラブが、最も活気があるお芝居小屋だろうことは、誰もが認めるところと思います。

先日、久しぶりに平日のお昼間に行きました。

長く活躍されている人気の座長率いる劇団の、特別公演の日ということもあって、早めに着いたにもかかわらず、通常席は既に埋まり、補助席がずらっと並んでいました。

f:id:chomoku:20160622164212j:plain

 

開演の合図とともに、手拍子が始まり、幕が開いて、役者さんが現れた途端、ハンチョウが飛び。役者さんと、ベテランのお客さんがたの、あうんの呼吸で成り立つ3時間。

舞台もですが、劇場全体の温度を感じたくて、来てしまいます。

足繁く通う熱心なお客さんたちで成り立っている客席。

でもね、言ってしまうとね、終始舞台に集中しているわけではなくて、お芝居になったら寝てる‥方もいてはりますしね。この日もお芝居の愁嘆場で、携帯鳴りましたし、バリバリとお菓子を開ける音もした、トイレに立つ人もあったし、他のエンタメならブーイングものかもしれないフリーダム状態ですが、なんのその、小競り合いがあったって、知らないうちにスーッと回復するマジックが、大衆演劇の客席に働いているのを感じます。(浪速クラブではスタッフの方の光る采配で特に)

カッケーんです。ゆるゆるやし、ちゃんとしてないのに、、、いや、このゆるさ、ちゃんとしてなさ、ええかっこしてないところに「参った」、カッケーってなるんですよね。

何度行っても、夢のような光景やなあと、思います。

 

いつまで、この夢の世界が味わえるだろうか。。。

ふと不安がよぎる。

中部地方の劇場が閉じられるそう。以前に比べてお客さん減っているって。そんな話を聞くと、どうしたらもっとお客さん増えるやろか、どうしたらどうしたら、って、いち客が考えたってしょうがないと思いつつ、うんうん考えてしまう。

一方で、先のことも今のことも何もかも忘れて、この場に、ただただ酔っていたいとも、思うーー

あの夢の酒場なき今、わたしにとって、大切な大切な、夢の住人になれる場所が、「大衆演劇のある空間」なのです。

 

 

Copyright © chomoku All Right Reserved.