読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

chomoku

"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2016年6月19日夜の部 春陽座@高槻千鳥劇場お芝居「鬼平犯科帳 般若と菩薩」

春陽座 大衆演劇

日曜夜、高槻千鳥劇場へ。ミニショーなしで始まったお芝居「鬼平犯科帳 般若と菩薩」昼夜で配役替えで、夜の部は澤村かずま座長が主演でした。

f:id:chomoku:20160622055251j:plain

写真:同日のラスト舞踊「純情花吹雪」澤村心座長・かずま座長

 

あらすじ(冒頭のみ)

鬼平犯科帳」から大衆演劇のお芝居に仕立てたもの。火付盗賊改役人・長谷川平蔵が「般若」と言われた放火殺人犯の女を召し捕って江戸に向かう道中での出来事。1幕3場、1時間25分。
(以下メモから書き起こし。名前の漢字は当て字です)

火付盗賊改役人・長谷川平蔵(澤村かずま座長)は、放火殺人の罪人おせん・通称「般若のおせん」(澤村かなさん)を召し取り、江戸へ向かう旅の途中、宿を取る。

長旅の疲れから下役人(澤村京弥さん・拓馬さん)のストレスもピーク。色欲を晴らそうと、おせんに狼藉をはたらこうとする。平蔵はそれを制し、2人に街に遊びに行くことを許し、見張り役を買って出る。

おせんと2人になった平蔵は、おせんになぜ罪を犯したのかと問いかける。大阪の地が近づいた時、それまで顔色1つ変えなかったおせんが、明らかに動揺していたこと。よかったら話してみないか、と。

心を閉ざし、ふてぶてしい態度を取っていたおせんだったが、自分を「鬼女」扱いせず、真から憂いでくれる平蔵を信じて、ようやく重い口を開き、身の上話を始める。

自分は大阪泉州の生まれで、親の言いつけ通りに結婚し、子宝にも恵まれたが、亭主(澤村心座長)はロクでもない男。ある日、亭主から借金の肩代わりにお前を買ったと言う金貸しと二人きりにさせられた。逃れようと抵抗するうちに、金貸しを殺めてしまい、島流しに。まだ乳飲み子だった我が子(子役澤村こうまさん)、生きていれば8つになるという。

話を聞いた平蔵は、おせんにある提案をする・・・

 

f:id:chomoku:20160622032650j:plain

おせん役 澤村かなさん 

感想など 迫る言葉

劇場に通ううちに、顔見知りになった方と、お芝居の情報交換をしています。春陽座の「鬼平犯科帳」は、そのお一人から「このお外題がかかったら是非見てね」と強く勧められていて、今回やっと観ることができました。

かずま座長の、気迫の演技。太い声での台詞が胸奥に迫りました。

隣りに座ってはったお客さんが、「"鬼平"言うたら中村吉右衛門さんのイメージ強いでしょ。だからね、どうやろ思て見てたんやけどね。よかったわ。ええ平蔵やったわ」と言われました。
 

f:id:chomoku:20160622032524j:plain

長谷川平蔵役 澤村かずま座長 個人舞踊「雪國」


劇場をフルに使うお芝居のスタイルが楽しい

千鳥劇場の舞台には花道がなく(正確にはある‥50センチくらいの)、花道好きなもんには、ちょっとさみしいとこなのですが、春陽座さん、通常は花道を使うだろうところ、そのまま舞台袖にはけそうなところでも、舞台から降りて、客席通路をどんどん通って行かれるのです。 

f:id:chomoku:20160622064859j:plain

澤村心座長 個人舞踊「転がる石」

 

1回のお芝居で、何度通られるだろう。舞台から飛んで走り去ったり、とぼとぼ歩いて帰ってきたり、、、結構長いので、演じる側はたいへんと思う。でも見る側は、これがとても楽しくて、巻き込まれます。 台詞も、客席の扉を入ったあたりから、話し始められるので、オーケストラのキャスト席にいるような気分に。

 

f:id:chomoku:20160622055216j:plain

左から:澤村みさとさん・澤村拓馬さん・澤村京弥さん「元禄花見踊り」

f:id:chomoku:20160622074508j:plain

宿の女将役 北条真緒さん個人舞踊「雪港」

 

母をかばっていう言葉に

1つだけ後半のネタバレですみません:

このお芝居は、平蔵、おせん、そしておせんの息子・千吉の、3人が柱。

子役のこうまさんの、素直な演技に、泣かされます。

辛い境遇の親子の姿というだけで、まあ普通に泣いてしまうのですが、、、今回は、嗚咽するまで涙腺が崩壊したのは、最終場。おせんが千吉を連れてきてしまったことに対して、平蔵が「なんということを!」と取り乱して叱り、手を挙げるところに、止めに入った千吉のセリフでした。

「おっかちゃんが痛いじゃないか」

ぶつな、叩くな、とか、かわいそうだ、とかじゃなくて、おっかちゃんが痛いじゃないか、と言うのです。つまり、外からの声ではなく、母になりかわって、母の立場になって言っているんです。

千吉には、母が打たれている姿を、真から我が事として見える。母が打たれたら自分も痛い。それは、自分もまた、おそらくこれまで何度となく大人の男から打たれてきたから、骨身で知っているから。。。

般若だ鬼女だと恐れられ下げずまれてきたおせんを、身体を張ってかばう者が、この世にいたことに、、、わたしゃあもう。。。(涙腺が崩れる音)

 

f:id:chomoku:20160622055043j:plain

澤村こうまさん 舞踊ではお芝居から一転キッズダンサー「ナルバキスン」
(「靴を履かずに裸足で出た」と後で突っ込まれていた)

 

f:id:chomoku:20160622055059j:plain

素顔はいたって11歳の少年 なんだろうなあ~


 

 「そこまでするには、よほどのわけがあるのだろう」

大衆演劇のお芝居を見るたびに思うのです、今の時代も同じことが起こっていると。おせんが語る身の上話は、社会が助けなかった、女性の難儀がこじれた最悪のケースとして、リアルに迫ります。

「そこまでするには、よほどのわけがあるのだろう」ーー

平蔵に促されて口を開いたおせんだけれど、平蔵にだって、初手から心を許したわけではなかったと思う。江戸に着いたら磔獄門、もう終わりだ、ならば‥と、思ったからではないやろうか。

「空の星ぼしに話すといい」という平蔵。

誰に話すのでなはく、星に、聞いてもらった。

このあたりのやり取りが、いいなあと思いました。

f:id:chomoku:20160622074742j:plain

ラスト舞踊「純情花吹雪」 

 

墓場まで持っていくつもりの言葉を

坂上香さん著「ライファーズ」という、アメリカの終身刑とその更生をサポートする人の話をまとめた本があります:

www.msz.co.jp

 

「加害者」と言われる人のほとんどが、始めは「被害者」だったこと。

「前科」が、その人の行く手を閉ざすこと。

閉ざした社会こそが、その人の尊厳を奪い人格を壊していること。

貼られたレッテルに、苦められていること。

家族にまで及ぶこと。それが何より辛いこと。。。

 

「墓場まで持っていくつもりのことを話さなければ、本音を話したことにはならない」 

さっきの平蔵の「人に言えぬなら、星に話すといい」と促した言葉と、この本の言葉が、重なりました。

「般若」は、おせんではなく、社会の側にいるのだと思います。

 

 

 

 

劇団春陽座 2016年6月公演

高槻千鳥劇場

大阪府高槻市高槻町18-5
高槻センター街ジョイプラザビル2階
(阪急高槻市駅から徒歩3分・JR高槻駅から徒歩5分)

昼の部12時から 夜の部17時から

1600円(前売り1400円)

高槻 千鳥劇場

春陽座Official Web Site

 

 

Copyright © chomoku All Right Reserved.