chomoku

"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2016年5月4日 劇団松丸家@奈良やまと座 お芝居「春木の女」

近鉄電車でひたすら南下し、奈良やまと座、劇団松丸家へ。
お芝居は「春木の女」を観ました

f:id:chomoku:20160508095735j:plain

(あらすじ)

漁師町で細々と暮らす家族に、突然舞い込んだ大店からの縁談をめぐる時代人情劇。1時間20分、1幕2場。

 (以下、メモより書き起し、名前の漢字は当て字です)

大阪の漁師町・春木では、もうすぐお祭りが始まる。若い衆が浜に集まり、太鼓の練習に勤しんでいるところへ、身なりの良い若者が(三代目鹿島順一さん)が、ふらっと現れ、釣り場を尋ねた。ぼーっとして様子がおかしい若者。村人の話もろくに聞かず、行ってしまう。案の定、危ないところへ入り込み、足を滑らせ海へ転落。果敢にも助けたのが、お咲(松丸家こももさん)だった。

若者は、お咲に一目惚れ。貴女の優しさと勇気に惚れましたと、結婚を申し込む。若者の名は新吉、京都の人形問屋「京屋」の次男坊で、暖簾分けをするにあたり、伴侶を探していたのだと言う。新吉は、お咲に必ず迎えに来るからと、お守りを託す。

お咲には、世間からアホと言われる妹のお妙(松丸家翔さん)がいた。母親のお寅(松丸家小弁太座長)は妹ばかりを可愛がって、姉には辛くあたり、労働を押し付ける。お虎のどんな無理難題にも、健気に応えるお咲を、父親の徳爺(甲斐文太さん)は、不憫に思うものの、お寅は元網元の娘、自分は婿養子の立場とあって、頭が上がらない。

程なくして、京屋の主人(咲田せいじろう花形)が、弟が結婚の約束を交わしたという娘を探して春木にやってきた。お寅は、お咲が落としたお守りを手に入れたのをいいことに、この縁談話、なんとかお妙のものにしようと画策する・・・

 

f:id:chomoku:20160508083947j:plain

お咲役 松丸家こももさん 家族思いの働き者の娘 ほろりとさせられる 

 

感想など

幕があくと、ひなびた漁師町の浜辺。若者が輪になって太鼓の練習をしている。潮風が漂ってきそうな情景。いい感じ。

そこに通りがかった徳爺が言う「今は(背景幕を指して)こんな絵に描いたような凪だがな、もうじきシケが来るんじゃぞ〜」

後で考えたら、これ、物語を象徴するような台詞でもあるなあと思いました。

 

知的に障害のあるお妙と、働き者で気立てのよい姉・お咲。母親のお寅は、お妙ばかりをかわいがり、お咲に辛く当たる。それには深いわけがあることだった・・・

後半、それぞれの胸の内が語られ、互いに納得。大団円となるところ、しっかりオチもありまして、、、どんなだったかは実際に見ていただくとしまして、涙涙で終わると思ったら甘かったという笑 

f:id:chomoku:20160508083920j:plain 
主演 小弁太座長 お寅婆さんの扮装での口上挨拶 迫力あってめっちゃ似合ってました〜なんて言うたら不本意に思われるかしら、、、

 

徳爺役 鹿島劇団責任者 甲斐文太さん

f:id:chomoku:20160508095422j:plain

 ひょうひょうと諦観して生きる徳爺に、シンパシーを覚える男性は多いのではないやろうか

   

新吉の兄・新太郎役 咲田せいじろう花形 

f:id:chomoku:20160508095500j:plain

大店を仕切る兄。自分が独占するのではなく、頼りない弟にも暖簾分けを持ちかける"漢"であります

 

知的に障害のある人が登場するお芝居

わたしは思うところあって、大衆演劇のお芝居のなかでも「障害のある人が登場するお芝居」を、重点的に見るようにしています。

それには、障害のある人(子)をいじめる場面や、差別用語が多く出てきます。

しかし、そこだけを捉えて「ヒドい」「差別している」と、反射的に反応するのではなく、そんな場面や言葉を含むお芝居には、障害のある人とともに生きる人たちの、生の姿を、見いだすことができる。

「障害者」という言葉がなかった時代の話がほとんどで、それらは、オリコウさんな啓発劇より、よほどリアルで核心に迫ります。

 

 お妙とその家族の思い

「春木の女」では、知的に障害のあるお妙という娘が、重要人物として登場します。

f:id:chomoku:20160508084125j:plain

お妙役 松丸家翔さん  いわゆるブサイクメイクなんですが、可愛らしかった

 

「この子は2歳を過ぎてもつたい歩きもしない、4歳になっても言葉も出ない‥」

お寅婆さんは、お妙の発達に遅れがあることを、このように説明します。今のように乳幼児の定期検診というものがなかった。「障害児」という言葉もなかった。

そして、そんな「普通の子じゃない」お妙を、世間の者が指差し、バカにすればするほど、お寅婆さんは、猫可愛がりなほど可愛がって大事にする。せめて自分だけでも、と。笑顔で接する心の内側では、「自分が死んだらこの子はどうなる」と、常に不安に思っていることを、吐露します。

また、「姉ちゃんが、ぶった〜」と、お妙が言う場面があります。お寅がお咲を叱ろうとするのを、徳爺が割って入って「お妙は嘘をつくような子じゃない。が、何か勘違いをして言っているのかもしれない。お咲にもちゃんと聞いてやらんと」と言います。

このセリフ、すごくリアルだし、すごくあったかい。
その子のことをよく見ている人にしか、言えない言葉です。

大衆演劇のお芝居の中で、こう言う場面やセリフが、随所にさらっと出てくるところが、とても大事だと思って、見つづけています。

 

 Happy?or not?

f:id:chomoku:20160508095544j:plain

新吉役 鹿島劇団 三代目鹿島順一座長
新吉はいいところの次男坊。生まれた時から恵まれた環境で、愛されて育てられ、世の中は自分の味方で。ゆえにガツガツしたところがなく、頼りないけど優しくて純粋で、、

 

「あの、これは、ハッピーエンドと思っていいのでしょうか…?」

わたし、どうしても、最後のオチが気になってしまい、送り出しの時に、三代目に尋ねてしまいました。 

「そうですね。みんな幸せになると思っていいと思いますよ。京屋さんも、いい人だから、お妙のことも、悪いようにはしないでしょうし。」と三代目。

よく「お客様の想像にお任せします」と言われますよね。
それはその通りなのですが、このお芝居に限っては、少しだけ確かな言葉を聞きたかったんです。

この三代目の、ふわっとした答えが、ありがたかった。

身内でも他人でも、一緒に生きるのは難しい。

海のように人間関係にも"シケ"がある。いくつも越えながら、互いの中で何かが強くなってゆく。。。

それは、「絆」と呼ばれるものではなくて、「許す心」なんではと、思っています。

 

 

f:id:chomoku:20160509125448j:plain

小弁太座長 女形舞踊
さっきのお婆ちゃん姿のだけではアカン^^; うつくしい1枚をアップ

 

公演情報

劇団松丸家@奈良やまと座 2016年5月公演

5月1日から30日昼の部まで 休演日:18日

奈良県宇陀市榛原萩原2445-6
近鉄榛原駅から徒歩3〜4分

当日:1700円前売り:1500円

電話/0745-82-1111
昼の部/12時開演3時頃終了
夜の部/6時開演9時頃終了

f:id:chomoku:20160505082205j:plain

www.yamatoza.com

 

 

 

Copyright © chomoku All Right Reserved.