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chomoku

"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2016年3月17日夜の部 本家真芸座@遊楽館 お芝居「峠の茶屋」

大衆演劇 本家真芸座

(あらすじ)

人情時代劇。山深い一軒家の、ある1日の出来事。60分、1幕1場。
幕があくと、背景幕に山の風景、舞台上手に粗末な家の玄関のセット。
物語は、この家の前を舞台に、繰り広げられます。

(*登場人物名の漢字は当て字で書いています)
 *メモから起こしています。間違いご容赦、随時訂正します) 

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写真:真城匠さん 同日の個人舞踊「旅鴉」

 

山奥深くの一軒家に暮らす甚兵衛(真城匠さん)のところに、飛脚(片岡桔梗さん)が1通の手紙を持ってやってくる。手紙は、7年前に家を出たきり音沙汰なしだった正三郎から。「働いて30両のお金を作ったから、それを持ってもうすぐ帰る」と書かれてあるという。

あんちゃんが帰ってくるって!喜ぶお花。

ぼたもち作って待っていようかと、甚兵衛。

ほどなく、金兵衛(豊島屋虎太朗さん)が、貸した金の催促にやってくる。「これ以上待てない、いますぐ返せないなら、娘を連れてゆく」と、無理やりお花を連れて行こうとする。

そこへ、通りかかった一人の旅人(片岡梅之助総座長)が、金兵衛とお花の間に割って入ってきた。男の顔には大きな黒いアザがある。恐ろしい形相で睨みつけられ、ひるむ金兵衛。旅人は、金兵衛に金を渡し、立ち去らせる。

 礼を言う二人に、「行きずりで起こした人情だから、礼には及ばぬ」と男。今から遥か向こうの山にある生まれ故郷に、死んだ母親の位牌とともに帰るという。

「もうすぐ夜になる、この辺りは猪狼の多いところだ、せめて一晩、泊まっていってください」と、頼む甚兵衛。

男は笑う「このツラを見てくんな。猪や狼だって逃げちまうよ」

「人は見目かたちではない、心です。あなたは助けてくれた恩人です」

甚兵衛の言葉に、男は、驚く。

「生まれて初めて、そんないい言葉を聞いた…」

男は、こころの荷を降ろしたかのように、自分の身の上について語り始めたーー

 

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11歳の可愛い飛脚 片岡桔梗さん 同日の舞踊より
隣はベビー志月ちゃん2歳

 

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片岡小梅さん 同日個人舞踊「赤いスイートピー

 

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豊島屋虎太朗さん 同日個人舞踊(曲名分からず‥)

 

今月 心に残ったお芝居

「峠の茶屋」というタイトルですが、峠の茶屋が舞台ではなくて、峠の茶屋を過ぎた後の、話になっています。峠の茶屋って何かが起こる場所、なんですよね。いろいろ想像を掻き立てられる、意味深なタイトルです。

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片岡梅之助総座長 同日の個人舞踊「愛にまみれたい」

 

登場人物も少なく、派手な立ち回りもない。その分、じっくり聞かせる台詞や、所作での見せ場がたくさんあり、1つ1つに胸を打たれました。

書き出すときりがないのですが、幾つか、記したいと思います。(長々とスミマセン‥)

 小道具 軒下の傘

お芝居で、楽しみにしているのが「小道具」です。お芝居のなかで、台詞と同じく、物語を牽引するものだったり、見せ場の要として使われます。それは、1枚の手ぬぐいだったり、一本の縄だったり、火鉢だったり。いつも「あれはどう使われるのかな」と、楽しみに見ています。今回も、幕が開いたとき、軒下にかけられていた「傘」があって、これを使った見せ場がしっかり。

 

サスペンス

飛脚、金兵衛、旅の男に続いて、7年前に出て行った息子の正三郎が帰ってきます。

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片岡大五郎座長 同日の個人舞踊「ちゃんちきおけさ」

 

物語の佳境はここから。手紙には30両のお金を貯めたとあったので、意気揚々と帰ってくるはずが、浮かない顔。途中で休んだ峠の茶屋で、振り分け荷物をすり替えられたと。盗んだのは、俺の隣で休んでいた、顔にアザのある旅の男だと。。。

「その人なら、今うちにいるよ!」とお花。

緊張が走ります。ひゃー。

 

信じることの難しさを思う

甚兵衛は、通りすがりの、人相の良くない旅人の、内なる人柄を信じ、温かく迎えることができる人物。なのに、息子の正三郎の言うことは、疑ってしまうんです。「お前が番頭になんてなれるわけがない」とか「30両なんて最初から嘘だったんだろう」とか。少し距離のある関係ならば、寛大な態度をとることができるのに、身内にはなかなか難しい。傷ついた正三郎は、ますます旅の男に対して疑いを募らせる。。。この辺りの心理描写に、今も昔もかわらない、人の気持ちの難しさをひしひしと。「わかっちゃいるけど」ですよね。。


股旅芝居の醍醐味

本家真芸座の股旅芝居が、本当に好きです。昔ながらの所作を、徹底的に見せてくれる。例えば、合羽を脱ぎ飛ばすとき。飛ばされた合羽が、パサ〜っと、野を吹く風を受けたかのように、スローモーション?と思うほど、きれいに落ちてくるんです。「カッケ〜!」と、心の中で叫んでしまいます(ここは年甲斐なくとも若者言葉で笑)

片岡梅之助総座長の、花道に向かってジグザグと繰り出される足さばき。「梅之助!」「総座長!」贔屓さんのよく通る声のハンチョウと相まって、毎回シビれるしゅんかんです。

「股旅」とは

"股旅とは、旅から旅を、股にかけるという意味で、自分のいっている股旅とは、「男で、非生産的で、多くは無学で、孤独で、いばらを背負っていることを知っているものたちである。」"(長谷川伸『石瓦混淆』より)

「峠の茶屋」の、顔にアザのある旅の男は、この言葉にあるような人物の一人で、男の背負っている孤独の深さに、胸が痛くなる。

顔にアザがある男は、心にもアザが、、、人の言葉によって傷つけられたアザが、無数にあるのだろう。そのアザが、この日、甚兵衛家族と出会ったことで、少しだけ、消えたかもしれないーー。そんなことを考えています。

 

 

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片岡梅之助総座長 同日の女形舞踊「炎の蛍」 
大衆演劇のお芝居は舞踊を見て 一息ついて 完結する感じがします

 

 

 

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