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"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2015年12月11日「大衆演劇と新世界」(連続講座・第1回)講師鵜飼正樹さん 於:大阪市立阿倍野市民学習センター


大人気講座!

京都文教大学連携講座 大衆演劇と新世界」講師:鵜飼正樹さん(社会学教授)

当初定員40名で募集を開始したところ、あっという間に定員に達し、会場を変更して80名枠に拡大、それでも足りず、最終120名の部屋を確保しての開講となったそうです。

 

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12月11日はその1回目。参加者はシニア層が中心、男性が多かったような。若い方もちらほら。大衆演劇の劇場でお見かけしたことのある方も、ちらほら。冒頭、鵜飼さんからの「みなさんのなかで実際に大衆演劇をご覧になられたことのある方はどれくらいいらっしゃいますか」という質問に対して、半数以上?もっと?の方が、手を挙げておられました。

 

前半 「私と大衆演劇鵜飼正樹さんの役者経験

前半は講師の鵜飼正樹さんが大学院生のときに、1年2ヶ月、大衆演劇の劇団員として過ごしたときの話を中心に。著書「大衆演劇への旅」に書かれていることと、それにまつわるエピソードを交えながら、話してくださいました。

大学院生のとき、今はなき尼崎の劇場「寿座」で初観劇。観客は6人。終演後、劇団のひとに声をかけられた。大衆演劇をテーマに論文を書きたいと思っていると伝えたら、だったら劇団に入って見聞きしたことを書いたらどうかと誘われる。今思えば、劇団にとっては人材不足対策だったかも、と。「とくに若い男は1人でも多い方が、出てきて切られるだけの役でも、お芝居に幅ができるんですね」と鵜飼さん。

1982年とのことですから、今からもう33年前になります。

鵜飼さんが「入団」した劇団は「市川ひと丸劇団」師匠は市川ひと丸さん。そのときの「兄弟子」さんが「南條すゝむさん(現・劇団花組むささき座長)だそうです。

(余談ですが:その市川ひと丸さんが、11月19日に開催された宝海劇団の天海大空さんの座長襲名披露公演の、口上挨拶で紹介されて、大空さんのお師匠さんだったことを知りました。ひと丸さんは、大空さんの晴れ姿を前に「感無量で(言葉が出ません)」と涙ぐんでおられました)

 

 

後半 大衆演劇の魅力とは

休憩をはさんで、後半は「大衆演劇の魅力」について、鵜飼さんの見方と解説です。

大衆演劇の魅力」はおおきく3つ:

1 うつくしさ (ミエ)

2 近さ  (アイソ)

3 くささ (クセ、アク)

であると。

 

「うつくしさ」については、化粧、衣装、所作。これらにはみな、大衆演劇独特の様式があり、「型」を踏襲しながらも、時代を追うごとに進化、変容しています。昔の役者さんの写真を見たら、明らかに今とお化粧が違いますし、体型も変わってきてますよね。化粧は「加筆修正」なるほど! でした。

「近さ」は、劇場の規模(小ささ)、入場料(低価格)、役者との心理的距離、そして観客同士の距離も。口立てのセリフとアドリブで進行するお芝居も、内輪話が舞台に出ることや、見る側が気楽に楽しめることにより、ハードルが下がる=近さが生まれる。
「送り出し」も、代表的な「近さ」と言えます。

「くささ」は、特殊な世界というイメージから発する感覚的なにおい(クセ・アク)、環境面では劇場の立地のにおい(繁華街、飲食店のにおい)や、客席にただようにおい(タバコ(最近はほぼ禁煙ですが)、化粧、食べもの)、そして「くさい芝居」。単純な展開、笑いと涙の義理人情、時代がかったセリフや所作。このくささが大事だと鵜飼さん。「芝居は四倍」と教わったそうです。通常より4倍、大げさにやれ、という意味だそうです。
さらに、旅回りのイメージ、田舎くさい、泥くさい、など。。。

大衆演劇のどこが好きかと聞かれたら、「"くささ"です」と答えるなあと思います。いまの大衆演劇のお芝居は昔と比べて"泥くささ"は薄れつつあると思いますが、やはり醍醐味である「ヤマをあげる」場面や、ヤクザもの・歌舞伎・浪曲ものなどの定番のセリフは健在。「待ってました!」と拍手喝采。
"くささ"は人間くささ。分かりやすさ、皆と共有できる部分でもありますよね。

 

映像より 「きれいなだけじゃない」

鵜飼さんがナビゲーターを務められて収録されたテレビの特集番組を、見せてもらいました。今から20年?もっと?の前の映像で、オーエス劇場、朝日劇場などの劇場の楽屋や舞台の様子や、近隣のお店との付き合いの場面などが出てきて、大衆演劇ファンにはお宝ものの、楽しい内容でした。

 

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面白かったのは、飛田商店街のかたと、劇団員による野球試合。劇団が近隣の劇場にのるたびに、交流試合があったそうです。映像の試合の結果は「14−2」で、商店街チームの圧勝。ここまで点差がひらくと「営業」(わざと負ける)ではないのは歴然で笑、いやいや微笑ましいでした。

印象に残ったのは、役者さんの行きつけの喫茶店のママさんの談話です。
ツイッターでも書いたのですが:

「座長がふらっと『これ四国のお土産』って持ってきてくれてね(略)暑いから汗だらだら、化粧もハゲててね。きれいなだけじゃないのよ」ーー

きれいなだけじゃない。だから、好き。

「そうよそうよ、女ってよく見てるのよ〜」と思いました。

 

汗と涙と笑い。

家族と、家族以上のつながりと。

 

近さゆえに 

鵜飼さん自身、大衆演劇のことを「イヤやなあ」と思った時期もあったそうです。でも、やっぱり好きで、ずっと関わってこられた。

「ものすごくみじかなスターと交流できる、特殊な世界」
交流できることで、見る人の満足度がアップする。

「いろいろな劇団やお芝居を見ていると、ちょっとした違いが見えてくる。そうすると、さらに面白くなって、どんどんハマっていきます」
ほんとおっしゃるとおりで、まさに、そこに、ハマっているなあ。

知れば知るほど知りたくなる、見ればみるほど見たくなる。いいことばっかりじゃなくて、自分が思い描いていたことと違って、勝手に傷ついた気持ちになったり、自虐的になって落ち込んだこともありました。

それは、大衆演劇に限らずで、映画のように都合よくフェードアウトできないのが人生。引き受けるしかなくて、なし崩しでやっているあいだに、また新しい道が見えてきて、気づいたらちょっとだけ強くなっている自分がいたり。

わたしが大衆演劇から学んだことやつながりは、想像以上に大きくて、わたしと同じような気持ちを抱えているかたは、きっとたくさんおられるにちがいない。。。

と、講座の話から飛躍してひとりごちてしまうのも、大衆演劇の「近さ」ゆえ、ただのいち客なのに、つい我がことのように思ってしまう、感情移入過多になってしてしまうので、ときどきは意識的に冷静にならないといけませんね。長く楽しむためにも。。

 

講義は10分前に終わり、10分の質問タイム。
レジュメ通り、時間通り、きっちり終了。すばらしい(すみません仕事柄つい)

 

第1回はここまでで、第2回は、いよいよ新世界(大阪のまち)と大衆演劇の関わりについて伺えるとのこと。楽しみです!

 

 

 

 

 

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