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chomoku

"大衆演劇が在る状態"が好きなので

2015年12月5日明生座 劇団悠「芸者の里」

12月5日 夜の部に行きました。お芝居は『芸者の里』

(キャスト)

芸者 静(しずか)松井悠座長
新三郎(旗本青山家の嫡子)高橋茂紀さん
旗本青山十三郎の妻(新三郎の義母)藤千之丞さん(特別参加)
静の兄 吾作 沢田ひろしさん
(ゲスト出演・このお外題の指導もされたそうです)
新三郎の妻 高野花子さん
村のひと 劇団みなさん

 

第1場 静と新三郎の家

芸者の静と新三郎は好き合って一緒に暮らす間柄。帰りの遅い静を心配しながら待っている新三郎。お座敷から帰ってきた静。女将に頼まれて断れなくって遅くなっちまった、ごめんなさいね。そうだったか。ならいいんだ。俺はお前に心底惚れちまってよ。馬鹿なやきもちをやいてしまった、すまん。いいのよ。それより新さん、あなたに話があるの。と、二人のこどもが出来たことを告げる。喜ぶ新三郎。

 

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貧しくとも愛するひとと生きることが幸せという芸者・静
松井悠座長 この日の個人舞踊でも芸者姿「梅川忠兵衛」 



じゃあこれから夕飯の支度をするから、貴方はお風呂にでも行ってきたら。でも、松の湯はダメよ。番台がきれいな女なのよ。あなたの裸を見られるのはイヤ。竹の湯もダメ。ちょうど今頃芸者たちが入りに来るの、「あら、いい男」なんて誘われるかもしれない。お前以上の女がいるわけないじゃないか。"ラブラブ"の2人。新三郎は銭湯に出かけていった。ほどなく、一人の武家の女(千之丞)が訪ねてくる。「火急の用がある」と…

 

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藤千之丞さん 武家の妻(新三郎の義母)役
悲しみも因果も忍び、武家の運命を全うしようとする女性
(千之丞さんと悠座長、いずれも異なるタイプの毅然とした女形で
 コントラストがくっきりと効いた、みごとな「絵」だったなあ)

 

 その「火急の用」とは。
武家の女いわく「新三郎は旗本三千石青山家の嫡子。新三郎が5歳のとき母が亡くなり、自分が後妻として輿入れし、義母として新三郎を育てた。自分との間にも子が出来たが、その子は崖から落ちあえなく亡くなってしまった。跡取りなきままではお家断絶。新三郎を返してほしい。どうか新三郎と切れてください」

酷なことと思う、でも、家を守るためにこうするしかないのだと、静に訴える。毅然と断る静に、短刀をとりだし、自害しようとする義母。静は人の命に変えられないと、別れることを承諾する。

  

帰ってきた新三郎に対して、静の態度が一変。酒をあおり、この甲斐性なしと罵り、「愛想が尽きた」と離縁を突きつける。にわかに受け入れられない新三郎だが、「別れ酒」と顔に酒を浴びさられ、とうとう出て行く。泣き崩れる静。家の外から義母、静に頭を下げ、新三郎を追う。

 

 

 

第2場 田舎の風景と粗末な農家の玄関

吾作(沢田ひろし)を訪ねて村人(駿河染二郎)がやってきた。

「女房に逃げられてな。あなたの夢を追いきれないと置き手紙を残してなあ。そこでだ、そなたの妹を俺の嫁にくれないか」「駄目だ駄目だ。大切な妹をお前にやるわけにはいかない」「でもこのままでは俺は孤独死だ」「仕方がない。お前も俺も、死んで3日後くらいに大家さんに発見される、孤独死の身さ」

演技のなかに、役者のリアリティを覗かせ、笑いを誘います。

染二郎「この芝居を持ってきたあんたを恨むよ」

ひろし「わしも他に(配役を)考えたんだが、そのあんたの背中の哀愁が…ぴったりだと思って」

 

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終演後の 悠座長(左)と駿河染二郎さん(右)

 

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特別ゲスト沢田ひろしさん
個人舞踊「千曲川」ではよもやのムーンウォークを披露!

 

やもめ話に花を咲かせた(?)後、村のこどもと親の喧嘩をとりなすなど、吾作さんの、村人からの信頼の厚さと人間としての器の大きさが垣間見られて、客席もほっと一息ついてくつろぐ感じ。


村人たちが帰ったあと、武家の女性(高野花子)が、赤子を抱いてやってくる。道に迷ったと、吾作に道を尋ねる「ふもとの茶屋まで行きたいのですが」「ああそれなら」と、劇場からJR鶴橋駅までの道順を的確に教える吾作。

鶴橋駅…そこが"ふもとの茶屋"ですか」「はい」

何気ないやりとりなのですが、沢田ひろしさんの言葉から鶴橋駅までの「地図」が浮かぶんです。ほんとにすごい役者さんです。

赤子を抱いた女性「すみませんが、水をいっぱいいただけませんか」
どうぞどうぞ、疲れたときは冷たい湧き水が一番じゃ、いま妹に持ってこさせます。おおい。兄の声に答えて、粗末な身なりの女性が出てくる。それが、かつての芸者・静だった。

 

第1場から2年の経過。新三郎は青山の家督を継いで、立派な侍姿で登場。義母もその後から続いて出てくる。さきの武家の女性は新三郎の妻で、赤子は新三郎の子。

静の変わり果てた姿を見て、さげずみ笑う新三郎。
わしと比べて哀れよのう。これは天罰じゃ、と。


新三郎は静を恨んで過ごしていたのです。
そして、その恨みが「立身出世」の原動力としてはたらいたのだと、思いました。

妹を罵る新三郎に、怒りの拳をあげる吾作。止める静。百姓が武士に歯向かうことは許されない。あわや乱闘?となるところを、義母が制し、全てを話す。ショックを受ける新三郎。すまない静。子は?そうか、産まれたか。見せてくれ、抱かせてくれ。。。せめて、この子だけでも、わしに任せてくれないかーーー

 

大詰めの場面、メモをとる手が完全に止まってしまい、新三郎、静、義母、吾作、新三郎の妻、それぞれの思いが交錯する舞台を、食い入るように見ていました。

 

最後は、、、悲しくも、納得できるものでした。

 

描かれる「女性像」

悠座長の女形、「嘘つきお元」のお元、「追われゆく女」のお千代でも、そうだったように、悠座長は「肩」で「女性」を表現される。気骨ある、ひょうひょうと生きる女性。不器用で、どこまでも優しい女性。そして、世間から押し付けられる"女の運命"に抗い、過酷な道をたどることになったとしても、自分の意思を貫こうとする女性。
それは、決して強い女性・特別な女性ではなく、市井のかたすみで必死で生きる女性の姿、なんです。さらにさらに、唸らされるのは、その意思を、周りもちゃんと伝えて、納得させてしまうところです。それにより、周りも、許されるという。。。

悲しくも爽やかなエンディング。1時間20分のお芝居。涙が止まりませんでした。

 

そして、この日から登場、待ってました!の高橋茂紀さん!

 

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新三郎の妻役の高野花子さん(写真左)と 高橋茂紀さん(写真右)

 

一途な男、後半は非情な男として、繰り出される一言一言が、心臓めがけて飛んでくる、大きな演技。

 

そして、第3部舞踊ショー、やっぱりやってくれました!

 

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「この売り場から一等賞が出ました」

わたしゃあ「茂子」が大好きだ〜

 

 

劇団悠@明生座公演

2015年12月1日から12月25日まで 
明生座
大阪市生野区桃谷5丁目9番23号 
電話 06-6712-3303 FAX 06-6712-3305 

 

 

 

 

 

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