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"大衆演劇が在る状態"が好きなので

参加させてもらいました:筑豊國太郎頭取を偲ぶ会@東海健康センター 2017年8月17日

8月17日午後3時、東海健康センターに向かって車で出発。お盆休みの混雑も落ち着いているだろうと思い込んで出たら大渋滞。がーん。そのためショーには大幅遅刻。。まあ半分は観られたからよかったとしましょう。。

 

初めての平針東海健康センター。 

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大宴会場はお客様いっぱい。

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 熱心に見るひとひと、拍手、手拍子、かけ声。すんごいいいムード。

テーブルにはビールや食べ物が並んでいる宴会場なのだけど、舞踊ショーの間は客電が落とされているので、視界に入らず、舞台に集中出来ます。 

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リラックスしつつ、みんなで舞台を見守り、芸に感嘆する。

変な連想かもですが、、、昔も昔まだ10代の頃、北海道へ渡るときに乗った、青函連絡船の二等船室を思い出しました。

青函連絡船が港に着くまでの一晩、客室に居合わせた者の間に生まれる連帯感と、舞台を一丸となって盛り上げようとする客席が、重なって。

いっぺんにこのセンターが好きになってしまいました。

 

 

筑豊國太郎頭取を偲ぶ会」

東海健康センターでは、毎月公演されている劇団さんとの交流会を開いておられるそうで、今回は特別にこういう形でとのこと。当初は40人くらいを想定されていたそうですが、増えに増えて60人くらいの参加者に。

席に着く前に頭取にお参り。

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写真は昨年12月のオーエス劇場の時のものだそう。
うんうん、この服着てトークしてくれはりましたね…

 

いつもの交流会では「乾杯」するところ、今回は「献杯」。

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素顔も男前三兄弟さんですが一応すっぴんなので写真はこれくらいの引きでご容赦^^

この先は、いつも通りの「交流会」に。正直「偲ぶ会」として何か語らいでもあるかと思ったので、やや拍子抜けしたのですが、、、でも、来てよかった。

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亡くなった人が生きている人にしてくれる、もっとも大きなことは、生きている人と人、それも、その人がいなかったら出会うことがなかっただろう人と人を出会わせてくれることだと、思う。

これまでの人生、たくさんの悲しい別れから、新しい出会いをたくさんもらってきました。

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さらに大衆演劇では「賑やかにするのが供養」という感じでしょうか、悲しい心を抱えながらも、追善公演が開かれ、お芝居を演じ、踊り、笑う。んです。

 

わたしも神妙にしていたのは始めのうちだけ、あとはテーブルで一緒になった方としゃべり、ビンゴゲームにジャンケン大会、目指せ豪華景品ゲット!と、すっかりノリノリで参加してしまいました^^;

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初めての交流会、1人で行っても大丈夫だろうか?浮いたりしないかな?と、ドキドキもので来たのですが、すっと馴染めて、会話に入れてもらえてありがたかったです。

 

 

「劇団と運営側とお客。この3つが協力して初めて最高の舞台ができると思っています」

この会を仕切っておられた、東海健康センターのKさんの言葉です。

大衆演劇はすごい文化ですよ。後世に残したい技や芸がいっぱい詰まっている」とおっしゃるKさんに、「ですよね!ですよね!」と力いっぱい相槌を打ち。

大衆演劇を盛り上げたくて、いろいろ企画を続けて来られたそう。以前はプロレスラーとのコラボも!見たかった〜。

「ここにいる1ヶ月間、役者さんがベストな状態で舞台に立てるようにすることが、会場を預かる者の役割と思うと、Kさん。

地域にも馴染んでもらいたいと、地域の方に引き合わせたりも。役者さんが「このセンターに来てよかった。もう一度来たい」と思ってもらいたいから・・・と。

なるほど、そういう取り組みを経て、あの会場の盛り上がりがあり、この打ち解け度100%の交流会があるのだなあと納得しました。

 

このパネルはスタッフの方によるものだそうです。

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筑紫桃太郎一座のみなさんがこちらで公演されたのは7年前とのことですから、写真は7年前のもの。

大切に保存されていらっしゃったんだなあ。

待っておられたんだなあ。。。

そう思うと、涙がこぼれます。

 

わたしも。。今年1度、頭取にお話を伺いたいとお願いしたところ、快く応じてくださり、教えてくださったこと、忘れません。

筑豊國太郎頭取に、何か出来ることはないだろうかと、、、そんなこと全くの自己満足ですが、、偲ぶ会に混ぜてもらいたくて、強行でやってきた。

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偲ぶ会がなければ、来ることがなかったかもしれないこの場所で、思いがけず良い出会いをもらえて、少しでも劇団のみなさんのお話も聞けて、ありがたかったです。

帰りもやや渋滞気味でしたが、辛さを感じませんでした。

 

www.tokaikenkocenter.com

 

2017年8月12日 劇団あやめ@がんこ座 お芝居「夏祭お七しぐれ」

「誰もいないさ。あるのはかぼちゃ畑だよ」(おしげ)

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猿之助座長 

 

インディペンデントな匂い

・・・を感じて、好きなのです。

現在座長以外のメンバーが全員女性である劇団あやめさんは、独自路線、というような言い方をついしてしまうのですが、役者・姫猿之助座長が作ろうとされている(んじゃないかと思われる)舞台は、古典に対する敬意と飽くなき追求の先に見えてくる世界であって。。。

うまく言えないのですが、例えば、古いモノクロの写真を丁寧に着色してゆくような、息の吹き込み方、蘇らせ方に近いのかもしれない、なんて思います。

前置きが長くなりました、、

8月12日、当たったお外題が「夏祭お七しぐれ」は"女団七"。7月に松竹歌舞伎と、たつみ演劇BOX小泉たつみ座長20周年記念公演の「夏祭浪花鑑」を観た後なので、お楽しみポイント倍増。うちから遠いりんくうタウンまで頑張って来て「おっしゃああ」でした。

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「夏祭りお七しぐれ」

(配役)

  • 女団七ことお七 咲之阿国さん
  • お七の母おしげ 姫猿之助座長
  • お七の妹お花  ひよこさん
  • 藤五郎親分   山戸一樹さん
  • 藤五郎の子分  初音きららさん

 

歌舞伎の演目 「夏祭浪花鑑」の一部をフィーチャーして作られた大衆演劇のお芝居。「団七しぐれ」という芸題でかけられていることが多いかな?

劇団あやめでは主人公・団七が「お七」という女侠客、父の義兵次が母で「おしげ」という茶店を営むお婆さんという設定で。1幕4景、60分。


以下、ざざっとあらすじを:

土地のヤクザ藤五郎親分がおしげ婆さんの茶店にやって来て言う「娘のお花を代官の妾奉公に出せば30両渡す」。強欲なおしげは二つ返事で承諾。知ったお七は、まだおぼこ娘の妹を守るために、自分の家にかくまう。

おしげも諦めない。お七の留守中にお花を連れ出してしまう。追いかけるお七。「金が欲しいなら私が50両を渡すから」とおしげを説得、お花を逃す。

しかしお七が「50両」だと言っておしげに渡したのはただの石ころ。騙されて逆上したおしげ、お七の額を破る。「親殺しは大罪」を笠に来てやりたい放題のおしげに、お七は我慢切れ、とうとう刀を抜く・・・

 

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「お七」咲之阿国さん 団七格子の衣装はこの役のために作られたそう

 

怪演とリアル

猿之助座長のおしげ婆さんの怪キャラぶりが、めちゃめちゃ面白くて、お腹が痛くなるほど笑ってしまいました。

短い中にも決め台詞や、歌舞伎的型や表情もたっぷり、エッセンスを楽しませてもらえて、すんごくありがたい。

「世の中はお・か・ね!」と、お金のためなら娘も喜んで売ってしまうおしげ婆さん、そりゃあもう大変な人物なのだけど「身近にこんな人いるよね」とも感じられるのは、演技がリアルで細かいからでしょうか。 「わたしを妾に?」と勘違いして、しなを作るところなどは本当に色っぽくてドキッとして。

悪くて、生き生きしている。

お芝居での悪役は、ただただ悪いより、どこか愛嬌があるワルが好きです。

 

女団七の優しさ 「囃子」と「殺し」

見せ場の、お七とおしげの母娘対決。

祭囃子が鳴り響く中、じわじわと「殺し」が始まる。

オリジナルと違って、お七とおしげ、女同士の対決。

男性同士による迫力と壮絶な「殺し」の場とは異なる、葛藤と優しさ。

たつみ演劇BOX小泉たつみ座長の「団七」で魅せられたのは、殺しの中にそこはかと滲む「恍惚」でした。あの場面は忘れられない・・・

そして阿国さんのお七はどこまでも優しい。震えて苦しんでいるような。。。

歌舞伎で観たときは、柵の向こうに祭り提灯が通り「泥場」との明暗を際立たせるように思った「祭り」が、「お七しぐれ」を観て、対比ではなく、逃れられない運命が祭り囃子になって、お七(団七)を掻き立て、かつ操る存在としてあるように感じました。

つまり「囃子があるから『殺し』が出来る」というか。祭りと殺しの興奮、渾然一体。この恐ろしく魅力的な演出はいつどなたが考えつかれたのだろうか。。

 

「夏祭浪花鑑」

この夏、歌舞伎と大衆演劇の「夏祭浪花鑑」を観て、このお芝居、ほんと面白くって、にわか論者の弁をどうかお許しいただきつつ、もし叶いますれば、両方観られたら楽しいですよ!と、勢い書いております。

歌舞伎の舞台にしかないものはもちろん多くあるけれど、大衆演劇版には歌舞伎にはない自由さ、面白さがある。そこはかとなく漂う哀愁や臨場感は、大衆演劇の方が、昔の歌舞伎小屋空間にあったものと近いのではないかと、思います。

もっと言うと、こんな風に分けて考える方が、ナンセンスなのと違うかな・・・この演目を観て一層思う。何より、お芝居(に限らずですが)はそんな狭い心のもんじゃあないよと、先人のみなさまの声が聞こえてきそうです。

 

決め台詞クリップ:

「かぼちゃ返せばまた来るかぼちゃ。今年ゃぁかぼちゃの当たり年だってねえ。ケケケ」(おしげ)

「どこまでのぼるやっこ凧。糸の切れ目が命の切れ目。後でどうする、覚えていろよ」(お七)

 

 

舞踊ショーより

客演中の山戸一樹さん

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この日の舞踊は「氷川きよし特集」男の色気と勢いと傾奇ぶりの格好よいこと

 

初音きららさん

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高くジャンプするきららさん
格好よいバック転は動きが速くて撮れなかった

ひよこさん

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 劇団マスコット ひよこさん この日は渋めに扇子舞で

 

咲之阿国さん

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人形振りの優しい表情

 

猿之助座長

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「雪散華」手には木製の鞘の刀 背中に「南無妙法蓮華経」 

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今年1月にこけら落としされたばかりの大衆演劇劇場「がんこ座」f:id:chomoku:20170817113838j:plain

 地元のお客さんと思しき方が多く和やか。月の前半で既にいいムードが漂っていて、近かったらもっと行きたいところです。

 

 以下、いただいたチラシのスケジュールです:

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がんこ座

大阪府泉佐野笠松2-6-36
電話:072-464-0224
JR関西空港線、南海空港線りんくうタウン駅」から徒歩15分
南海本線「羽倉崎駅」から徒歩20分

お昼の部12時半から 夜の部17時半から
木戸銭:ドリンク付きで1500円(前売り1300円)
詳細はKANGEKIの案内ページをご覧ください

e-kangeki.net





 

柝(き)の音・地声のお芝居・あると嬉しい配役紹介

柝(き)

お芝居の始まりや、幕切れを知らせる柝の音が好きです。

「チョン、チョン、チョン、チョチョチョチョ・・・チョン!」

最近は柝を使わず電子音で代用されるところが多いのですが、それだとキンキン響いてちょっとキツく感じる時が。

柝を使っておられる劇団さんは全体の半数以下?かな??

できれば柝で打って欲しいなー。

2つの角材を合わせて出る音が、広い会場の隅々まできれいに響くことに、
何度聞いても驚きます。

舞台袖から柝を持つ腕がちらっと覗くのを見るのも好きです。

 

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写真、ピンぼけのしかなかった うースミマセン、、、
(撮るより急いで手打ちをしないとと)
大入御礼の柝を打つ恋川風馬さん
恋川劇団@新開地劇場2017.1.22

 

お芝居でマイクを使わない

ピンマイクを使わずに地声でセリフを話される劇団さんがあります。

声の通りが自然で、ほっとします。

昔バンドをやっていた時、ギター弾きの方に「アコースティックギターにマイクつけたら別の楽器やで」と言われて、なるほどと思いました。人の声もそんな感じかな?(マイクを通した音や声も、それはそれで好きですが)

補助的に集音マイクを設置されていて、よほど大きな会場でない限り、それで十分聞こえます。昔の舞台にはマイクがなかったわけだから、より時を遡った感じが味わえます。
「マイクをつけない方が声が飛ばない(痛めない?)んですよ」と、教えてくださった役者さんがありました。

剣戟はる駒座鵣汀組・倭組さん、恋川劇団さん、近江飛龍劇団(劇団HIRYU)さん・・・

わたしが知る中で、マイクを使わずにお芝居をされている劇団さんです。

そういえばこの4劇団さんとも、柝も使ってはります。

 

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 劇団HIRYU 2017.7.19@鈴成り座

 

 

お芝居前の配役紹介

お芝居前に配役紹介をしてくださる劇団さん。

森川劇団さん、劇団武るさん、劇団美山さんは、欠かさずアナウンスが。

「なんとか一家の若いもん カメ吉」とか、名前を聞くだけでも楽しいし(わたしだけ??んな事ないよね!^^;)、役名がわかると物語に入っていきやすくて助かります。

毎回の、開演前の1分ほどのご配慮、とってもありがたいです。

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森川劇団 2017.4.27@鈴成り座

 

 

 

ピンクの鬘と大団扇〜梅南座のママさんの大入りパフォーマンス

少し前にフェイスブックに書いた記事をブログにも:

4月28日、若手の介護職の方の集まりの場で、大衆演劇をテーマにミニトークをさせてもらうことになりました。

普段の劇場の様子を紹介するのに、撮りためた写真フォルダをごそごそ、1年前のこんな写真を発見しました。

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大阪市西成区にある梅南座。こちらの小屋主のママさんは「大入り」が出たら、ピンクのかつらをかぶり「大入御礼」の垂れ幕を持って登場。

さらにその上「ダブルの大入」の時は、巨大うちわを持ってぶんぶん仰ぐという、目出度いパフォーマンスをしてくれる。上の写真がそれです。

 

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舞台の上の役者さんは、舞踊の最中でも、この「大入り」の登場を見たら「やったー!」とガッツポーズ。お客さんもやんやと拍手。

 

ママさんはおでん名人でもあります。

 

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5種類入って500円なり

 

役者さんからは「こんにゃく婆ァ」なんて、限りない親しみと敬意を持って呼ばれています。

舞台の上だけじゃない、お芝居小屋そのものにもドラマがいっぱい。
そのドラマがなかなか濃くて一筋縄ではいかない。

語り始めるときりがありませんが、まずはまずはのとっかかりに、こんな話もレジュメに忍ばせたのでした。

 

南座

大阪市西成区梅南1-8-22
地下鉄四ツ橋線「花園町」駅から徒歩5分
阪神高速松原道「なんばIC」から20分
昼の部12時から 夜の部17時30分から
木戸銭 1300円(前売り1000円)

詳しくは公式サイトまたはKANGEKIの案内ページをご覧ください

梅南座

e-kangeki.net

 

「川の茂みも薄情な」・・・お芝居「紅蜥蜴 べにとかげ」劇団武る@鈴成り座 ゲスト沢田ひろしさん 2017年8月6日夜の部


「こんな守り袋、持っていたって仕方がねえと、ある時、俺ぁ川へ投げ捨てた。川の茂みも薄情な、止めてもくれず、下へ下へと流れていったぁ・・・」(紅とかげの銀次郎)

時代人情劇「紅蜥蜴(べにとかげ)」

■あらすじ(メモから書き起こし・途中まで・敬称略)

信州のある集落。

江戸の世情を騒がせた悪党・紅とかげの銀次郎(座長三条すすむ)が、信州路に逃げ込んできたらしい。「何としても捕まえよ」親方(都京太郎)が捕り方たちを集めて言う。まだ駆け出しの春太郎(都たか虎)も呼ばれ、初めての大捕物に張り切っている。

 春太郎は父親新兵衛(沢田ひろし)と妹おちよ(都祐矢)の三人暮らし。家に戻って「今夜は物騒だから家から出ないようにしてくれよ」と父と妹に言う。

「大きな役目だ。お上から預かるその十手、曇らせるんじゃねえぞ。たとえ罪人が親戚でも、情けに流されて天下の御法を曲げちゃならねえ」と答える新兵衛。元は自分も十手持ち。息子の春太郎の成長に目を細めて送り出す。

雨の音。急いで新兵衛が貰い風呂へ向かう。「御用だ!」捕物の声。追われる紅とかげの銀次郎、とっさに新兵衛の家に身を隠す。そこへ帰ってきた新兵衛と出くわす。

新兵衛は驚かず、ずぶ濡れの銀次郎に「風邪をひくから」と着物を貸す。家の中を見渡して、十手があるのを見て警戒する銀次郎。

「確かに俺は十手持ちだったが今は隠居の身だ。それに、昔のたとえで言うだろ、"窮鳥懐に入ればまた狩人それを撃たず"ってな」

新兵衛の落ち着きぶりに合点がいった銀次郎は、請われるがままに身の上話を始める。

幼い頃、父親に角兵衛獅子に売られたこと。辛くて飛び出し、空腹に耐えかねて握り飯を盗んだこと。そこから盗みを繰り返し「紅とかげ」と言われるような悪党になったこと。

黙って聞いていた新兵衛の顔色が変わる。他でもない、銀次郎を売った父親とは、自分のことだったから・・・

 

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「紅とかげの銀次郎」役  三条すすむ座長  

 

感想など 流れてゆくお守り袋

1幕2景、50分強。

序盤の捕物前は、嵐の前の静けさ。ひと波乱の予感が漂います。

第2景での銀次郎が新兵衛に明かす身の上話。すすむ座長の抑揚豊かな語りから繰り出される、1つ1つの光景が目に浮かび、引き込まれました。

特に、冒頭に書いたセリフ。

親からもらったお守り袋を「こんなもの持っていたって仕方がねえ」と川へ投げ捨てた銀次郎。自分で捨てておきながら「茂みも薄情だ、止めてもくれない」と言うのです。その時の寂しさと、淀みに飲まれてゆく「お守り袋」が目に浮かぶようでした。また、そのお守り袋は銀次郎自身の姿とも取れて。。。

後半の展開がやや速くて、端折られたか、辻褄が??つながらなったところが。もう少しじっくりゆっくりやってもらえたら~と、欲なことですみません。

 

沢田ひろしさんのこと

かつては春陽座で劇団指導者として活躍、今はフリーに。色々な劇団さんの、主に関西の劇場公演でゲスト出演されています。

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個人舞踊「雨の大阪」歌詞に「天神祭」が出てくるので、選ばれたのかな?

 

達者な、そして不思議な役者さんです。そう、魔法使いのような・・・

沢田さんが「雨だ」といえば雨が降り、「私はそういう女だよ」と言えば鉄火肌の女が座っている。緻密な演技と役支度。

舞踊では、豪快なアクション(バック転もできる!)やムーンウォークが飛び出すと思えば、北国の風が吹きすさぶ原野や太鼓が響く空が見えるような「越後獅子の唄」、心が凍てつく人形振り・・・(この辺り、バレエ漫画「SWAN」を手本に色々表現してみると楽しいです^^)

見ていて胸が熱くなる「訳あり男」を全身で演じながら、ゲストとしての任務を完うするのを第一義としているような。

ゲストで呼ばれた先の劇団を盛り立てるんだという強い意思で、決して出過ぎることがない「一線」も、見える。そんな義理堅い職人気質なところになんて格好よいんだろうと思う半分、もっと出張って欲しいなあとも思う、ファン(観劇仲間ではひろしネットワークと称してます^^)の1人です。

 

「紅とかげ」新兵衛役のひろしさん。

手ぬぐいをひょいと引っ掛け、貰い風呂。駆け出す様子から、どれくらいの距離をゆくのか、わかるような気がする。そんな距離まで見える。

濡れながら帰ってきて、傘の雨を落とす。その所作から、舞台が湿める。
(今度は演劇漫画「ガラスの仮面北島マヤの演技を見て青筋を立ててビビる姫川あゆみの気分で^^)

銀次郎の話を黙って聞きながら、火箸で火鉢を搔き回す。探っているのは炭ではなく、自分の過去・・・そんな心象の表現を目の当たりにするほどに、生の舞台に触れる喜びがこみ上げて。

このような細やかな「受け」(リアクション)の演技で、主役の存在を一層濃く、映えさせているのだと思います。

 

昔ながらの言い回しや、こちらの想像を掻き立ててくれる演技のやり取りがいっぱい。久しぶりに沢田さんが準主役でのガッツリ芝居が見られて(それでもまだまだ引き出しの奥は深そう)嬉しい夜でした。

  

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ラスト舞踊「じょんがら女節」

劇団武るの群舞は、スタンダードなフォーメーションをキッチリ繰り出される。舞台を大きく使って幅いっぱいにずらり!並んだ姿はとても華やか。奇をてらわず、舞踊の所作を踏まえることに重きを置かれている感じで、「踊りを見た!」という気持ちが満たされます。

 

 

 

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